五十二夜目『日常茶飯事』
これはHさんが、東京都K市で体験した話です。
Hさんが19歳から23歳までの四年間付き合った彼氏の家での出来事。
彼氏は自分で霊感が強いと言う人でしたが、Hさんは見えないものは信じないタイプでその手の話には興味がなかった。
彼氏の家に遊びに行く事も多く、二階建ての一軒家で二世帯住宅で、一階はおじいさんおばあさんが住んでいて、お風呂が一階にあるので入浴以外は二階で生活していた。
その為、おじいさんおばあさんとは面識もなく、彼氏の両親も共働きで兄姉も仕事の為、夜になるまでは比較的静かな家だった。
その日は昼間から彼氏の部屋でゲームをしたりダラダラと過ごしていた。Hさんは彼氏の部屋から出てお手洗いに向かった。洗面所で手を洗ったついでに顔も洗っていたとき、
「もう帰ってたのか…」
と突然後ろから声をかけられたので、お父さんだと思い、挨拶しようと急いで顔を上げたのに誰もいなかったそうだ。
それを彼氏に話すと
「あーそういうのは無視して。別に悪さしようって感じじゃないから」
と、特に驚く様子もなかった。
こ家に何かがいるそうでよく不思議なことは起こるのが日常茶飯事。
Hさんはその家に泊まった時にその正体をハッキリと見てしまった。
夜中突然目が覚めて、Hさんの視線はドアのほうを向いていた。
するとドアが勝手に開いて、暗い部屋から人の形をした真っ黒なものが出て行くのが見えた。
慌てて彼氏を起こしても
「大丈夫だから。いつものことだから」
とHさんを落ち着かせようとしてくれたが、それ以来遊びに行っても暗くなる前に家を出るようにした。
普段見えないモノを見たり聞いたりして、本当に気味が悪い家でしたとHさんは話した。