九十九夜目『学校の七不思議』
これはMさんが京都府H市で体験した話です。
私のいた中学校には、ちょっと怖いトイレがあった。
しかしそこに入ったことがある人は誰もいない、というより入りようがなかったのだ。
そのトイレは、あまり使わない校舎の1階にあった。
校舎の外にある木のせいで薄暗い廊下の奥に、トイレの入口があるはずなのだが最初から壁だったかのように塗り固められていた。
そのため、入学当初はそこの壁の中に空間ががあるとは思っていなかった。
なぜそこがトイレだと分かったかというと、その壁の向かい側に手洗い場があったこと、校舎の外から見た時にその場所に窓ガラスがあったこと。
そして、その窓ガラスに防護のためにあるフェンスの隙間から見えたのは内側から打たれた板。それが2つ並んでいた。
明らかに何かの教室にしては小さい部屋で、同じ狭さの窓ガラス。きっと男子トイレと女子トイレだろうと思ったのだ。
入学してから数ヶ月してくると、いろいろな噂を聞くようになった。
ある時は、板がはずれていて中が見えたとか、隣の特別教室にいた時に水が流れる音を聞いたとか。
先生に聞いても何も教えてくれないので、学校の七不思議になっていた。
私も隣の校舎の3階で部活動をしていた時に、その場所の窓が見えたのだが、板が上まできっちり貼られていなかったのか、トイレの中が見えたことがあり、中にはトイレのスリッパが置いてあるのが見えた。
私には霊感はないのだが、友達に霊感が強い子がいて、そのトイレの前をその日通ったようで、
パタパタパタ
というスリッパの音が聞こえてきたと言われ、寒気がした。
今では、その中学校も新しくなったようで、あのトイレは既に無くなっていると思う。