【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百九十六夜目『きぃ』

浴室から出ると、着替えも済んでいない俺に妻は

「何か変な音がする」

と言ってきた。
時刻は既に2時を回ろうとしている。もう寝たいというのが本当の所だが、妻の話を聞いてやらないと解放されそうもない。

その時妻はリビングで読書をしていたらしい。

きぃ…きぃ…きぃ…

と、どこからか音がした気がした。
顔を上げて周囲の様子を窺ったが、特に変わった様子はない。
再び手元に視線を戻すと

きぃ…きぃ…

また音がした。聞き間違いではないようだ。

住んでいるのは狭い賃貸アパートで、音がした方は凡そ把握出来る。
その音は金属が擦れるような、ガラスを爪で引っ掻くような、そんな音だった。

きぃ…きぃ…きぃ…

不規則に聞こえるその音、最初に頭に浮かんだのは古いチェア。
背もたれに体を預ければ、軋んで不快な音がする。少しでも体勢を変えれば、重みに耐えかねてすぐにでも壊れてしまいそうなキャスター付きのイスだ。

音のした方にある部屋は、夫婦の寝室と子供部屋。
寝室にはそんなイスは無く、子供部屋には勉強机とセットで買ったイスがある。
また娘が夜更かししているのだろうと思い、扉をノックしてから開けると、既に部屋は常夜灯がつけられ、娘は二段ベッドの上でスマホを弄っていた。当然イスになど座っていないので、予想は外れた事になる。

「変な音しなかった?軋むようなきぃきぃって音」

「知らないけど…」

娘は音を確かめるように二段ベッドを揺らしてみた。
ぎっぎっぎっ、と鈍い音がするだけで、あの音ではないのが分かった。

こうなると音の正体が分からない。
まさか、外から誰かが窓を引っ掻いているのでは…?
そんな気味の悪い想像が頭をよぎったそうだ。

「ねぇ、あなた。何の音だと思う?」

しばらくその音を待ってみたが、一向に聞こえて来ない。

「聞いてみない事には何とも言えないよ。とりあえず、また聞こえたらすぐに教えて」

どうせ空耳だろうと決めつけ、俺はさっさと寝る準備を始めた。
いつまでも考え込んでいる嫁を尻目に、さっさと寝ようとベッドに潜り込んだ。

「この音」

妻の視線の先にはきぃ…きぃ…と軋む、俺の潜り込んだベッドがあった。