百九十四夜目『やわらかいもの』
これはLさんが北海道I市で体験した話です。
うちの母方の家系は、いわゆる第六感の強い家系でした。
私も私の姉も小さい頃は何度かそういう体験をしてきましたが、母の幼い頃の話が1番ゾッとしたのでそちらを話したいと思います。
母がまだ幼い頃、祖母に連れられて友達と近くの川で遊んでいたそうです。くすの木という大きな木のある川で、私も幼い頃ここで泳いでいましたが苔も多く、綺麗な川というよりは濁っている川でした。昔は夏になると結構な人たちが訪れて泳いでいたそうで、その日も沢山の子供達が泳いでいたそうです。
母と母の友人が泳いでいると、母は何か柔らかいものを踏んだそうで、友人に
「何かここに柔らかい物があるよ!」
と伝え一緒に踏んでいたそうです。
その直後、大人たちがざわつきだして
「〇〇ちゃーん!〇〇ちゃーん!」
と子供を探し出しました。
そこでもしかして、と思った母。その嫌な予感は的中して、母と友人が踏んでいたものは溺れて沈んでいた子供だったのでした。
そんな酷い出来事から数十年後、くすの木の近くをタクシーで通った母はそのことを思い出してタクシーの運転手に話したそうです。
するとタクシーの運転手は低い声で震えながら、
「それはわしの孫じゃ」
と言ったそうです。
偶然なのか必然だったのか、こんな出会いがあるのは不思議だと感じました。