これはSさんが東京都T市で体験した話です。
Sさんが小学生の時、当時は霊的な話や怖い話が好きで本を読んだり、心霊番組を見ることが多かった。
少し前に大好きだった祖父が亡くなり、初めて死後の世界を意識し始めた頃だった。
ある日、両親と弟が買い物に出かけるということでSさんは留守番をする事にした。家は一軒家、2階の寝室でいつも通り布団の上でごろごろしながら本を読んでいた時、
トンッ、トンッ、トンッ…
と音がした。初めは気にも留めなかったが、いつまでも鳴っている音が少しきになった。音に聞き耳を立てるとあることに気づきゾッとした。
この音は、誰かが階段を上ってくる時の音だ。
その謎の足音はずっと階段で足踏みをしているようにトンッ、トンッ、トンッと音を出している。
しかし、家にはSさん以外誰もいない事を今更思い出して怖くなり、布団に潜り込み隠れたそうだ。
それでも音は止むどころか段々大きくなっている気がする。
Sさんは恐怖で動けなくなり、この音は誰が鳴らしているのか、もし寝室まで来てしまったらどうすればいいのか。
止めて、止めて!来ないで!心の中でそう強く念じた。
その瞬間ピタリと足音は止んだ。ホッとしたのも束の間、
ダダダダダダッ!
と階段を駆け上がる大きな音を最後に、Sさんの意識は途切れた。
「S!しっかりしなさい!」
気づくと両親に起こされていた。弟は部屋の入口から半泣きでSさんを見ていたそうだ。
「あ、おかえりなさい。ちょっと寝てたかも」
「S、何も覚えてないの?」
「え?なにかあった?」
「…覚えてないのならいいのよ」
寝室で布団を被って気を失っていたSさんは、はたから見れば寝ているだけのはずだが、何故か両親は一生懸命起こそうとしており、弟は怯えた様子。
Sさんの身に何かが起きていたのは間違いないのだが、誰一人教えてくれないそうだ。