十三夜目『おんり』
これはSさんが栃木県で体験した話です。
Sさんは祖父母、父母、弟と共に、亡くなったひいおばあちゃんの家に行った時の事。
ひいおばあちゃんが亡くなってから、もう8年ほど経っていたのだが、近所の方からその地域に住んでる者ではない人たちが、庭にゴミを置いていったりしているようで、ゴミ置き場状態になっているという話を聞いて、その処理に一家総出で向かった。
Sさんがひいおばあちゃんに会ったのはだいぶ小さかった頃なので、顔もほとんど覚えていなかったそうだ。
ひいおばあちゃんの住んでいた家に着くと庭には竹がたくさん茂っていて、陽の光があまり当たらないような状態で、外から見ただけでも門の付近には自転車や家電といったものが放棄されているのが確認できた。しばらくゴミの処理をしたり、家の敷地を見て回り、不審な物や侵入された形跡が無いか確認していた。
「ここ変な声が聞こえる」
弟が急に気味の悪い事を言い始めた。ただでさえ日の当たらないような暗い中でそんなことを言ってくるものだから、Sさんはとても怖くなり寒気もしてきた。
母にも弟が変なことを言ってると言うと、弟は「やっぱり家の中から声がするよ」という。
ひいおばあちゃんが亡くなってから誰も家の中には上がっていないはずなので聞こえるわけがない。
Sさんは怖かったが、なんて言ってるのか弟に尋ねると
「おんり、おんり」
という声がすると言ったそうだ。
中からは誰かがいる気配もしなかったし、ゴミ処理も終わったので有耶無耶にしたままSさんたちは帰った。
その後弟には変な声が聞こえるということも無く、声の正体は分からないまま。
もしかしたらひいおばあちゃんの声が聞こえたのかなと今では思っている、とSさんは話した。