これはMさんが東京都H市で体験した話です。
Mさんが小学四年生の頃、当時は両親と姉と、四人で二階建ての一軒家に暮らしていた。
その家の隣には墓地があり、幼心にこれがなんとも不気味だったという。
寝室は階段を上がって左に曲がった突き当りの部屋で、家族四人全員で寝ていた。
ある晩のこと、その日もみんなで寝ている時、家族が全員寝静まる中でMさんは一人目を覚ました。夜も更けているのか車が走る音もしない、真っ暗で静かな夜だったほうだ。
トットットッ
誰かが階段を上がってくる足音が聞こえた。家族の誰かがトイレに行って戻ってきたのかなと思い、家族の様子を伺うとMさん以外の三人の寝姿が、部屋の中に見えた。
全員部屋にいるということは、今階段を上がってきているのは誰…?
トットットン…トン…トン
そう思っていると、足音の主は階段を上り切ったようだ。その足音が、Mさん達の寝ている突き当りの部屋に、どんどん近づいてくるのが分かった。
Mさんは怖かったのだが、それ以上に何が来ているのかが気になってしまい、布団をめくってドアの方を凝視して、足音の主が部屋のドアを開けるのを待った。
ガチャ
とうとう部屋のドアが開けられると、風のような大きな音がして、部屋の入口いっぱいにに真っ白く大きな物体が広がっており、部屋の中へ入ろうと、グググッとめり込んでくるのが見えた。
よく聞くと、その風の音に紛れて何かを呼んでいるような子供の声がいくつも聞こえるのに気付いた。Mさんはこのただならぬ状況にだんだん怖くなっていったそうだ。
「おかえりー」
隣で寝ている母親が急に声を出した。とうとう限界に達したMさんは布団を被り、早くそれが消えるのを待った。
しばらくすると風の音が鳴り止み、Mさんは恐る恐るドアの方を確認すると、寝る前は確かに閉まっていたドアが開いていた。
翌日、母親に寝ている時急に話した事を覚えているか聞いたのだが、母親は何も覚えていなかったそうだ。