七十九夜目『赤いコートの女』
これはCさんが福岡県K市で体験した話です
私が中学生の頃の夏休み、当時母と兄妹弟と一軒家に住んでいた。
ある夜、玄関の近くの手洗い場で手を洗っている時に兄が赤い服を着た人と帰ってきた。
友達連れてきたんだなぁと思い、居間に戻ると兄だけがいた。
「あれ?友達連れてきてなかった?赤い服の」
と訊ねると
「俺一人よ、I峠に行ってきた帰り。脅かさんでよ」
と兄は地元で有名な心霊スポットに行ってきたようだった。
「幽霊連れて帰って来たんじゃないの~?」なんて、家族で笑い話でその場は済んだ。
その夜、部屋のベッドでウトウトしていると庭の方から足音が聞こえ、私の部屋の網戸の前で止まった。
深夜によく兄の友達が来ていたので、兄の友達かな?と
特に気にも止めずそのまま眠りについた。
次の日兄に
「昨日友達遊び来た?」
と訊ねると
「いや、誰も来てないし連絡もないよ」
と。
それから1週間ほど、深夜に足音が聞こえ自室の網戸の前で止まる現象が毎日続いた。
さすがに気持ち悪いなと思い、妹の部屋で眠る事にした。
その夜、庭の方から足音が聞こえ、
(またか)
と思っていると自室を越え、私の眠っている妹の部屋の前まで来て止まった。
(あれ、これ、私に会いにきている?)
そんな事を思った。
それ以来眠っている時に耳元で女の人に囁かれているような声が聞こえるようになり、うなされる日々が続いた。
家に1人でテレビを見ている時に、
「いかないで」
という声が聞こえた事もあった。
元々甘いものは好きじゃないのに、何故か無性にケーキが食べたくなって、ほぼ毎日ケーキを食べたり、カフェオレが好きなのにブラックコーヒーを飲むようになった。
まるで私が私じゃなくなっていくような感覚。
日毎眠っている時に聞こえる声は大きくなり、精神的に参ってきていたので気晴らしがてら自転車に乗って近所をブラブラする事にした。
自転車を漕ぎながらふと窓ガラスに映った自分を見ると
自転車の後ろに赤い服を着た女の人が座っているのがはっきり見えた。
いよいよ、気のせいじゃない。
兄が心霊スポットから連れて帰って来た幽霊が何故か私に憑いてきている。
帰って泣きながら母親に説明すると、母親が友達に紹介された神社に行ってお祓いをしてもらおう、という事になった。
予約を取り付け、長い坂を登ったところにある神社に到着。私は神主さんに自分の現状を説明した。すると神主さんに、
「家の近くにお墓とかある?」と訊ねられた。「ありません」と答えると少し言い淀んだ後に
「あのね、あなたに会いに来てる人が居るのよ」
と告げられた。
神主さん曰く、私の先祖の先祖のそのまた先祖に火をくべて死者を弔う神官が居たそうで助けてもらえると思い、憑いているとの事。
ショートケーキとブラックコーヒーが好物の、30代ぐらいの赤いコートを着たOL。
「今のあなたでは助けてあげられないから、この御札と好物をお供えして手を合わせてあげてね。それと、今後もこういう事があるかもしれないから、このお守りを持っていてね」
と、御札とお守りを渡され帰宅。
その夜、自室の隅にショートケーキとブラックコーヒーを供え、手を合わせ供養をした。
ボソボソっと声が聞こえたのを最後に怪現象はパッタリと止んだ。
皆様も心霊スポットに行く時は連れて帰らないように気をつけてくださいね。