二十五夜目『葬儀会場での声』

これはSさんが宮城県S市で体験した話です。

祖母の葬儀の後、葬儀会館に泊まったときの出来事。寝支度を済ませ布団に横になりウトウトし始めた頃、女性の大きな金切り声が聞こえてきた。

「ゆうじ！なんで死んじゃったのよ！！」

そのときは隣の部屋の方が故人とのお別れを嘆き悲しみ取り乱しているのだろうなという思いで聞いていたが、落ち着かない気持ちになり眠れなくなってしまった。
それでもしばらくすると、またウトウトし始めた。

「ゆうじ！！先に逝かないでよ！！」

先程と同じ女性の声にビクっとして飛び起きた。

｢隣の部屋から女の人の声が…」

流石に堪りかねて受付の人に事情を話すと、その人は不思議そうな顔をして

「お客さま、こちらのとなりは倉庫になっており人はいませんが…」

それを聞いた時、血の気が引いていくのを感じた。それからは眠りにつこうとすると、またあの声が聞こえるのではないかと怖くなり、一度も寝る事が出来なかった。

次の日無事に葬儀が終わり我が家へ帰宅した。前日の寝不足もあってヘトヘトだったので、早く休みたいと思いながらシャワーを浴びていた。

「ゆうじ、本当に死んでしまったのね…」

不意に耳元で聞こえた女性の声は紛れもなく昨日聞こえた声だった。そのときSさんは怖いという気持ちよりも、ゆうじさんの死を受け入れきれないその女性の心境を思い切なくなったそうだ。
Sさんは静かに手を合わせゆうじさんのご冥福を祈った。

その後はもうあの女性の声を聞くことはありません。これは私の人生の中で起きたなんとも奇妙で少し悲しいお話ですとSさんは話してくれた。