【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百八十九夜目『帰る場所』

これは東京都H市にお住まいのMさんから聞いたお話です。

私の父は個人タクシーの運転手をしていました。父曰く終電帰りの駅周辺は酔っ払いが多く狙い目だそうです。

今から十年ほど前、深夜に駅周辺を流していた父は風変わりな男と出会いました。酔っ払いにしては身なりがきちんとした三十代の会社員で、俯いたまま片手を挙げています。
男性を見た瞬間、父は何故か嫌な予感がしたそうです。できれば素通りしたいのですが、呼ばれてしまった以上そうもいきません。
渋々ブレーキを踏んで後部座席のドアを開けた所、男が音もなく乗り込んできました。

「どちらまで?」

ひどくぼそぼそと聞きとり辛い声で男が指定したのは、高台を拓いて造成した住宅地でした。
走行中の車内には重苦しい沈黙が立ち込めています。乗り込んだ男は一切喋らず瞬きもしませんでした。
やっぱり生きてる人間じゃないんだと直感した父は、得体の知れない男を車から下ろそうと決意したものの、足は意志を裏切ってアクセルを踏み、手がなめらかにハンドルを回し、まるで誰かに体の自由を奪われたのような状態でした。

一体自分はどうなってしまうのか……パニック寸前まで追い込まれた父をよそに、後部座席の男はぼんやり窓の向こうを見詰めていました。

三十分ほど走り続けるとT霊園が見えてきました。目的地の住宅地はこの手前にあり、やっと解放されると安堵の息を漏らすも束の間、男の様子に変化が起こります。

「そうだ俺は……ああ、なんてことだ」

「どうされましたお客さん。こちらでいいんですよね?」

目を見開いたまま悔やむ男を遠慮がちに窺えば、彼は

「目的地の変更です。Т霊園に行ってください」

と丁寧に頼みました。
幸い住宅街と霊園はさほど離れていなかったので、父は数分とかからず男を送り届けました。
男はタクシーから降りると父に一礼し、暗闇に包まれた霊園の中に消えていったそうです。

翌日の昼間、男を拾った地点を通りかかった父は道端にそなえられた花束を目撃しました。そこでは一週間前に事故が起き、働き盛りの男性が命を落としていたようです。男は自分の帰るべき場所を悟り、無事に帰ったのでしょうか。

百八十八夜目『波打つ池』

これはSさんが愛知県A市で体験した話です。

私が小学生の時の事。
当時、家の近所に大池という公園に隣接しているバス釣りやアヒルの餌やりが出来る池があった。
日中は人通りが多く、近所のご老人が散歩していたり、子供が遊んでいるのだが、夜には人通りも少なくなり明かりもないので、池の水音だけが聞こえる少し気味の悪い場所。

この大池には色々な噂があり、戦争で戦死した兵隊が池に沈んでいるということ、夜に池の周りに居ると池から髪の長い女の人の幽霊が出てきて、水中に引きずり込まれるなど、他にも様々な怖い噂があった。
当時、多感な小学生であった私は週末を利用し、友人2人と3人で深夜に家を抜け出して大池に探索に行くことに。

自転車で向かう途中、後ろから微かな声で、

『イクノヲヤメナサイ…』

と、細い女性の声が聞こえた。私は隣に居る友人達に

「今、何か声聞こえなかった?」

と問いかけた。すると友人達は

「聞こえないよ。驚かすなよ」

と私を少しバカにしたような感じで笑われた。
そうしている間に大池に着き、私は何か嫌な予感がしながらも懐中電灯を持ち歩き始めた。

しばらくするとカタカタカタという異音と共に、池の反対側から波がゆっくりと押し寄せて来るのが分かった。怖くなった私は懐中電灯を波に向けると、ただの波だと思っていた波紋は、大きな女性の顔が口を開けている形に波打っていた。

友人達と私は大きな声を上げて急いで逃げ出し、その声に気づいたのか近くをパトロールしていた警察官に見つかり補導されて、両親からかなり怒られた。
普段は逃げたくなる状況だったが、当時はホッとした。
それ以来、夜に大池に行くことは無くなった。

百八十七夜目『振り向く癖』

これはCさんが群馬県M市で体験した話です。

昔から視える体質で、霊的なものを見ることが多かった。
ある日、家族で群馬県へ出かけた帰り道の出来事。

その日は車で、夫と娘と私の3人で少し遠出をした。夫の運転で娘が助手席に座り、私は後部座席に座っていた。
夫には運転する時に出てしまう癖があった。後部座席に座っている人と話が盛り上がると、後ろを振り向いてしまうのだ。
それを私によく注意をされていたのだが、なかなか直る気配は無かった。

群馬県と長野県の境目にある、長いトンネルに差し掛かった時、夫と話が盛り上がってしまうといつものように後ろを向いてしまった。
そして私はいつものように

「前を見て!」

と注意をすると、夫はしぶしぶ前を向いた。
しばらく話していると、また後ろを向いて話し始めた。今度は少しきつめに注意した。

「ちゃんと前向いて!」

「え、前向いているよ」

と夫はこちらを見ながら言った。
なにかがおかしいと思い、後ろを向く夫をよく見るとトンネル内のオレンジの光に照らされた、別人の男性の顔がこちらを見ている事に気付いた。

それとは別に、バックミラーには夫の前を向いた顔が映っている。
トンネルの中は暗いこともあり、ちょうど夫の顔と重なって、夫がこちらを向いているように見えたのだ。
その顔はじっと私を見つめていたが、トンネルを抜けると同時に消えた。

百八十七夜目『三面鏡』

これはNさんが千葉県で体験した話です。

私は、千葉県にある某工業団地で職人の仕事をしていた。
自宅は埼玉県なので、通勤にかなりの距離があるので、千葉県内に引っ越すことにした。
初めての引っ越しが不安で、職場の同僚のOさんに相談し、賃貸契約についていろいろと教えてもらっていた。

数日後、不動産に連絡して千葉県内にあるアパートの内見に行くことになった。
ここでも同僚のOさんを呼び、一緒に来てもらうことにした。
実はこのOさん、もともと霊感の強いタイプの人で、霊の気配を感じる場所が分かるのだそうだ。
Oさんと一緒に不動産の営業の方と車で移動し、候補の一つである築20年以上の古い2階建ての古いアパートに到着した。
外階段を上り2階へ移動し、営業の方がドアのカギを開け、さっそく中に入ることになったのだが、玄関で靴を脱ごうとした時、ある異様なものに気付居た。
畳の敷かれた和室のど真ん中に、なぜか「化粧台」が置かれていたのだ。
30cmほどの高さの座椅子に、正面に三面鏡がある古い化粧台だった。
気持ち悪いな…と思った瞬間、一緒についてきたOさんは一歩も中に入ることなく、車の方へ走り去ってしまった。

それからOさんに何かあったのか聞いても、濁すばかりで営業の方には悪いが、一度保留にしてもらった。
翌日、職場でOさんに会った時にもう一度聞いてみると

「化粧台の下の部分に、真四角で白い顔をした女がいて、こっちを見ていた」

と言われた。保留にしていた物件はキャンセルしてもらい、私は今も引越しはしていない。

百八十六夜目『臨海学校の肝試し』

これはSさんが福岡県I市で体験した話です。

小学校四年生の夏、臨海学校での事。
夜になると、宿泊していた旅館の上にある神社で、肝試しを行う事になった。
男女混合でそれぞれ3人ずつの6人編成で、10分おきに懐中電灯一本のみでスタートからゴールまで目指すという単純な「肝試し」だった。

いよいよ私のグループに順番が回ってきた。
時刻は19時過ぎで、夏とはいえ薄暗くなってくる時間帯になっていた。
先発グループの、「キャー、キャー」という、甲高い悲鳴が聞こえてくる。
なんでもこの神社は、心霊スポットとして有名だという噂があった。とは言うものの、実際は先生方が衣装を身にまとい、お化け役で驚かしてくるのだが。

私のグループがスタートしてしばらくたった頃。
先発グループは既に見えず、どこからも悲鳴が聞こえない静寂の中をゆっくりと進んでいると、道が二股に分かれているところにさしかかった。
矢印は右に出ているものの、その先にはおままごとをしている子供が、道を塞ぐように座っていた。

「ねえ君たち、さっきここを通った人達はどっちへ行ったかな?」

と聞くと、矢印とは反対方向を黙って指さした。私たちは、なんとなく不気味な雰囲気の子供達の横を通るのも気が引けて、私達は左側を進む事にしたのだ。

先程と変わって、舗装もろくにされていない道に何度も足を取られながら林の中を突き進んで行くと、10分ぐらい歩いた先は完全に道が無くなり、行き止まりになっていた。
ゴールのような気配も無く、迎えてくれる先生方もいない。辺りを懐中電灯の頼りない光で照らしていると、行き止まりだと思っていた少し先に石碑のようなものがあるのに気付いた。

水子地蔵」

目を凝らしてみて、やっと読めた瞬間私達は慌てて先ほどの分かれ道まで手をつないで走って戻った。
そこには子供の姿もなく、おままごとの跡形すらなかった。

後から先生に話して旅館に確認してもらったのだが、そのコースに分かれ道などは存在せず、そんな時間に子供が居るはずもないとの事だった。
思い返してみれば、スタート地点でも聞こえていた先発グループの悲鳴が、あの道では全く聞こえなかったのを思い出して、ゾッとした。

百八十五夜目『歯ぎしり』

これはBさんが熊本県U市で体験した話です。

私が小学生の時の事だ。
今はもう亡くなっているが、昔は熊本県に住む母親の祖母の家に、家族で毎年夏や冬ごろに帰省していた。
祖母の家は二階建ての一軒家で一階に居間・和室・祖母の部屋、二階が一室に母の部屋・母の妹の部屋があった。

祖母の家は日中は日当たりも良く、家自体も大きかったので子供だった私は楽しかった記憶があるのだが、夜になると必ず誰かに見られている視線がずっと続き、不思議に思っていたのだ。
夜に一階にあるトイレに行くときや、二階の部屋から一階に移動するときなどは自然と小走りで移動するようになっていた。
あの時までは、ただの自分の思い込みだと思っていた。

それはある夏の夜、家族で寝るとき兄が叔母が使用していたベットで、母は学生のころに使用していた自身のベットで、母のベットの隣に布団を敷き、私と父が一緒に寝ていた時の事。

ふと、目が覚めてしまったようだった。起きているのか寝ぼけているのか、曖昧なはっきりと覚醒しない意識の中で、凄い寒気と同時に隣で寝ている父の方から

「ギリギリ…ギリギリ…」

と歯ぎしりのような音が聞こえてきたせいで、なかなか眠りにつく事が出来なかった。

うるさいなと思い、父を起こそうと目を開けた時、隣で寝ていはずの父の首がありえない位置から90度に曲がり、短髪だった父の頭には長いぼさぼさの髪が生えて、まるで自分の足を見つめるさらし首のようだった。
この異常な光景に恐る恐る

「お父さん?」

と声をかけると、歯ぎしりの音と同時にそのぼさぼさ頭の首がゆっくり動き始めた。

「ギリギリギリギリィ――ッ」

次の瞬間、一層大きな歯ぎしり音と共に父の首は勢いよくこっちを向き、私を睨みつけてきた。
とっさに目を閉じたのだが、身体が縛られた感じで動けなくなったのと、

「ギリギリギリギリィ――ッ」

と絶えず聞こえる歯ぎしりの音がどんどん近づいてきて、冷や汗が止まらずどうしようと思っているといつの間にか朝になっていた。
あの後おそらく気絶したのだろう。それでも鮮明にあの異様さを覚えており親に伝えようと思ったのだが、なかなか言い出せなかった。
当時唯一聞けたのは、昨夜の父の歯ぎしりがすごくなかったかという事だけ。それでも家族の返答は静かだったというのだ。

この一件を親に詳しく言い出せたのは、私が高校生になってからで、祖母の家で怖い経験をした話をすると母から

「ずっと言ってなかったけど、私も昔あそこに住んでいた時は毎晩ずっと金縛りや歯ぎしりっぽい音が聞こえていたよ」

と言われた。
また、母もその件について祖父祖母や叔母にずっと相談していたが、そんなことないの一点張りで話をちゃんと聞いてくれなかったようだ。

最後に、母から聞いた話だとその土地は昔、狐塚(キツネヅカ)という地名であったことと、そこに沼があったらしく、その沼があった場所に建てた家や、沼があった周りに建てた家の男性のみが若い年齢で突然死や変死があったとの事。
そのため、母の近所の人の旦那さんがほとんど早くに亡くなっていたそうだ。
私の祖父もその地域の家で突然死している。

これは後日談になるが、祖母もその家で怖い体験をしたらしく、詳しい内容を聞こうとすると

「口が裂けても言えない」

とだけ言われ、引っ越しを決意しその家を売却した。
売却後すぐに誰かがその家を購入し、現在も住んでいるようだ。
私や母、祖母が経験したことが今現在も続いていないことを願う。

百八十四夜目『ナースコール』

これはEさんが岡山県O市で体験した話です。

いわゆる心霊スポットなどでの心霊体験といえば、見聞きした方は多いと思います。
幽霊って本当にいるの?心霊現象って本当に存在するの?と疑問に思う方も多いと思いますが、職業柄そういう現象とは多々出会うため心霊現象が本当に起こり得ない現象ではないのだと個人的には思っています。

私が体験した話、同僚などから見聞きした話はたくさんありますが今回はそのなかの1つのお話をしたいと思います。
岡山県の某所に存在する介護施設では、現在では珍しい建物ではありますが1人部屋でなく2人部屋の部屋が大半でした。本来であれば2人部屋のため2人の入居者で1つの部屋を使用するのですが、その部屋には全盲だった方が1人で利用していました。過去形なのは、その方が既に亡くなってしまったからです。

この施設はナースコールの受話器が壁に備え付けられている古いタイプの部屋で、その方も生前ナースコールを使用する際は壁まで手などで手探り状態で出歩きその受話器を使用されていました。その方が部屋で亡くなられてちょうど1日経ったか経たないかの時間帯。
深夜になる前の時間に、その部屋からナースコールの着信があった。フロア担当であった夜勤者の背筋は凍りついたそうです。亡くなって日が浅かったため、部屋の片付けなどをすることもなく。ただ、居室に施錠されただけの状態の部屋。ナースコールは受話器を外さなければ受信されないタイプのものだったため、誤作動にしても不自然。
本来であれば電話越しに会話を行えるのですが、その時は受話器に耳をつけることすらできなかったです。

部屋の確認にいきたくないのが本音ですが、受話器が何かの拍子でずれていたのだとしたら、直さなければナースコールが鳴り止む事はない。1人で部屋を確認に行くのは恐ろしいと夜勤者が話すため、当時残業をしていた私を含めた3人で部屋の確認に行きました。居室前まで辿り着き、部屋の解錠を行い居室に入ることにしました。
部屋には電気がついていないため電気をつけ、受話器の確認を行うと、受話器はいつも通り壁にかかっていた。つまりただの誤作動だったようでした。

誤作動にしてはタイミングが良すぎるのもあるなと思ったのは、その方が亡くなられた死亡推定時刻とそのナースコールの時間帯はほぼ一緒だったから。