百八十七夜目『三面鏡』
これはNさんが千葉県で体験した話です。
私は、千葉県にある某工業団地で職人の仕事をしていた。
自宅は埼玉県なので、通勤にかなりの距離があるので、千葉県内に引っ越すことにした。
初めての引っ越しが不安で、職場の同僚のOさんに相談し、賃貸契約についていろいろと教えてもらっていた。
数日後、不動産に連絡して千葉県内にあるアパートの内見に行くことになった。
ここでも同僚のOさんを呼び、一緒に来てもらうことにした。
実はこのOさん、もともと霊感の強いタイプの人で、霊の気配を感じる場所が分かるのだそうだ。
Oさんと一緒に不動産の営業の方と車で移動し、候補の一つである築20年以上の古い2階建ての古いアパートに到着した。
外階段を上り2階へ移動し、営業の方がドアのカギを開け、さっそく中に入ることになったのだが、玄関で靴を脱ごうとした時、ある異様なものに気付居た。
畳の敷かれた和室のど真ん中に、なぜか「化粧台」が置かれていたのだ。
30cmほどの高さの座椅子に、正面に三面鏡がある古い化粧台だった。
気持ち悪いな…と思った瞬間、一緒についてきたOさんは一歩も中に入ることなく、車の方へ走り去ってしまった。
それからOさんに何かあったのか聞いても、濁すばかりで営業の方には悪いが、一度保留にしてもらった。
翌日、職場でOさんに会った時にもう一度聞いてみると
「化粧台の下の部分に、真四角で白い顔をした女がいて、こっちを見ていた」
と言われた。保留にしていた物件はキャンセルしてもらい、私は今も引越しはしていない。