百八十七夜目『振り向く癖』
これはCさんが群馬県M市で体験した話です。
昔から視える体質で、霊的なものを見ることが多かった。
ある日、家族で群馬県へ出かけた帰り道の出来事。
その日は車で、夫と娘と私の3人で少し遠出をした。夫の運転で娘が助手席に座り、私は後部座席に座っていた。
夫には運転する時に出てしまう癖があった。後部座席に座っている人と話が盛り上がると、後ろを振り向いてしまうのだ。
それを私によく注意をされていたのだが、なかなか直る気配は無かった。
群馬県と長野県の境目にある、長いトンネルに差し掛かった時、夫と話が盛り上がってしまうといつものように後ろを向いてしまった。
そして私はいつものように
「前を見て!」
と注意をすると、夫はしぶしぶ前を向いた。
しばらく話していると、また後ろを向いて話し始めた。今度は少しきつめに注意した。
「ちゃんと前向いて!」
「え、前向いているよ」
と夫はこちらを見ながら言った。
なにかがおかしいと思い、後ろを向く夫をよく見るとトンネル内のオレンジの光に照らされた、別人の男性の顔がこちらを見ている事に気付いた。
それとは別に、バックミラーには夫の前を向いた顔が映っている。
トンネルの中は暗いこともあり、ちょうど夫の顔と重なって、夫がこちらを向いているように見えたのだ。
その顔はじっと私を見つめていたが、トンネルを抜けると同時に消えた。