【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百六十夜目『閉店間際の客』

これはMさんが群馬県S市で体験した話です。

私が社会人一年目の頃。
Uターン就職で、私は地元のスーパーに就職した。
スーパーと言っても、食品売り場だけでなく書籍売り場やおもちゃ売り場、布団など生活雑貨も取り扱う少し大きめな店で、私は衣類部門に配属され、主に若い女性をターゲットにした服を扱っていた。

その日、あと30分で閉店を迎える店内の衣類売り場のレジにいたのは、私とアルバイトの女の子Iちゃんの2人だけ。
平日の夜19時半頃は、食品売り場はにぎわっても、衣類売り場はお客さんの数もまばら。
アルバイトの子は、いつも閉店間近になるとレジ近辺のゴミ箱に溜まったゴミを、バックヤードのゴミ捨て場に持って行くことになっていた。
「そろそろゴミ捨てに行きますね」
Iちゃんがそう言うのとほぼ同時に、レジの対角線上にある試着室に、お客さんが入っていくのが見えた。
なんとなく2人してそれを眺めて、Iちゃんはごみ袋を取りにバックヤードに向かった。

もう1人女性のお客さんが1人だけ売り場を回っていたので、私はレジに残っていた。
少しするとIちゃんが戻ってきてゴミを袋に入れて、再びバックヤードへと捨てに向かって、しばらくするとゴミ捨てを終えてレジへと戻ってきた。
先程から15分くらい経っていたのだが、その間試着室からお客さんは出て来なかった。

戻ってきたIちゃんは、試着室の前に水色のスニーカーが置いてあるのを見て、
「まだお客さん出てこないんですか?もうすぐ閉まっちゃうのに」
と言いだし、やがて閉店10分前の蛍の光が流れ始めた。
食品売り場のレジが最終のお客さん達で混んでしまい、閉店時間の20時を過ぎてからお店を閉めることはよくある。
その日もそうで、20時を過ぎても蛍の光は流れていた。
衣類売り場を回っていた女性のお客さんは、結局何も買わずにギリギリになって退店していった。
店内のBGMも止まり、しんとする店内で試着室からも全く物音がしない。
声をかけた方がいいなと思って動こうとした途端、店内の電気が少しずつ消えて薄暗くなりはじめた。

お客さんがすべて出ていったと判断した誰かが、電気を消し始めたのだ。
このままでは自動ドアもカギを閉められてしまうと思い、自動ドアまで急いで向かった。

青果部門の先輩が自動ドアのカギを閉めようとしていたので、
「すいません、まだお客様います!」
と声をかけると、先輩は少し驚きながら
「どこ?」と先輩は一緒についてきてくれたので、私は試着室のところまで先輩を案内した。
Iちゃんは困ったようにレジのところに立ったままで、
「出てきた?」
と私が聞くと首を横に振った。

先輩はカーテンが閉まったままの試着室に近づくと
「お客様、本日はもう閉店です。お客様がいることに気付かず、消灯してしまい申し訳ございません」
と声をかけた。しかし、試着室の中は静かなまま。
先輩は何度か呼びかけたが、それでも何の反応もないので、ついには失礼しますと言ってカーテンを開けた。
「なんだよ、誰もいないじゃん」
と先輩が呆れたように言った。足下を見ると、確かにあったはずの水色のスニーカーが消えていた。

試着室はレジの対角線上にあり、誰かが出入りすれば確実に分かる。
レジには私とIちゃんのどちらかが常にいたので、お客さんが出ていったのならどちらかが気づいたはずだ。

その後、念のために店内を探したが、お客さんは見当たらなかった。
店内には防犯装置もあるので、閉店後に誰かがいたら反応するはずだが、それもなかった。
あのお客さんがどこに行ってしまったのか、未だにわからない。