百三十夜目『タイマー』
これは愛知県N市に住むTさんから聞いた話です。
会社の先輩が引っ越した先の、賃貸で起きた話。
YouTuberとしての顔をもつ先輩は、動画のネタのために新しい住居をビデオに撮ることにした。
リビング兼寝室から始まり、最後、玄関の脇にある小さな間取りの部屋を撮影した。
撮影を始めて間もなく、電気の明かりがぼんやりと、不規則に、ついたり消えたりを繰り返していたそうだ。
先輩は奇妙に感じつつも、その部屋をあとにした。
数日経ったある日。
深夜、先輩が寝ている時に突然、台所からキッチンタイマーが鳴り出した。
時計を見ると3時過ぎ。寝る前に間違ってセットしてしまったかとも思ったが、タイマーは99分までしか設定できないため、0時前には寝ていた先輩がこんな時間にセットする事は不可能。
先輩は驚きのあまり、布団にうずくまることしか出来なかった。そして、数分なり続けた後、タイマーは止んだそうだ。
翌朝、恐怖を感じた先輩はすぐに、そのキッチンタイマーをゴミ袋に投げ込み、そのまま会社へ向かった。
19時前に帰宅して、ご飯の用意を始めたその時、台所に向かう先輩の後ろで、
「ピピピピピ!!!」
と大きなアラームが鳴った。
あわてて振り向くと、そこにはゴミ袋の中で、無機質に鳴り響くキッチンタイマーがあった。
恐ろしい何かが近づいてきているのを感じた先輩は、ここに住んでいてはまずいと、すぐに引っ越しの準備をしたそうだ。