【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百四十五夜目『あそぼ』

これはTさんが石川県K市で体験した話です。

20年くらい前の事。
当時仲がよかったバンドマンの友人達といっしょにK市のライブハウスでライブを行うためワゴン車に楽器を積み、夜に東京を出発した。
途中休憩をしてライブハウスに到着したのは明け方の4時前。ライブハウスは古い酒蔵を改造したおしゃれなバーで、ジャズの演奏も行うような場所だった。

ライブのリハーサルは午前9時ごろからだったので、ライブハウスのオーナーのご好意で、その酒蔵の2階のロフトで仮眠をとらせて頂くことになった。友人達は運転の疲れからか備え付けのソファーや大きなクッションにもたれてすぐに眠ったようだ。
私もうつらうつらとし出した時、
「ねえ、あそぼ」
と声が聞こえて目が覚めた。そこには小さな男の子が立っていて私の顔を指で叩くように触ってきた。顔が見えなかったので見ようとと思ったのだが体が動かない。何が起きているのか分からず混乱した。

そうこうしているとその子はそばにあったピアノを鳴らし始めた。音が微かに聴こえているが適当に鍵盤を叩いているようで不協和音が響いているだけ。
それに飽きたのかまたそばにやってきて私の顔を覗き込んだ。
その時私はこれは人間ではないと確信した。その顔は目が異常に大きくて、口は切れ込みだけがあり鼻はなかった。
驚いて目をつぶり子供の頃おばあちゃんに教えられた般若心経のお題目を唱え続けた。

その子は私の周りをバタバタと走り回りながらキャッキャと笑い声を立ててどこかへ行ってしまったようだ。
そのうちまた眠ってしまったのだろうか。目が覚めたら友人達は皆起きていた。ライブハウスのオーナーがコーヒーを淹れて持ってきてくださったので、さっきの男の子のことを聞いてみたところ
「えっ、でました?」
と言われ、詳しく話をしてくれた。

この酒蔵は10数年前に火災で一度焼けてしまったそうだ。その時の持ち主のお子さんが亡くなられたそうで、このライブハウスにはその子が友達欲しさに現れて「あそぼ」と誘ってくるとの噂がある。
特に悪さはしないようだがきっと寂しいのだろう。
今でも私の頬にその子が触れた手の指の感覚が残っていて、そして今でもどこからか「あそぼ」と聴こえてくるような気がする。