【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百三夜目『ピアノの音』

これはSさんが岩手県K郡で体験した話です。

私が高校2年生の時の事。
当時実家が貧しく、築60年超え、家賃月に500円の小さな木造戸建ての団地に家族三人で住んでいた。平成中期の世には珍しいほど内外装や風呂トイレの設備が昭和初期感を醸し出していて今思えば「いかにも何か出る」ような雰囲気の家だった。
生まれたときから16年間住んでいるので自身の感覚がマヒしていたのかもしれないが、友人らからは

「この家なんかやばい」
「Sと遊ぶことは嫌いじゃないけど、この家なんか具合悪くなる」

と言われるのには慣れてしまうほどだったが

「何か出たら出たで、どうしようもない」

と私は開き直っていた。

ある夏の日の夜、次の日が定期考査だったため試験勉強をしていた。よほど勉強に熱中していたのか、気づけば時計は午前2時40分を回っていた。
寝不足で集中出来なければ元も子もないと布団に入り、うとうとし始めたころの

ポロン

と安っぽいおもちゃようなピアノの音が聞こえた。我が家にはピアノはないし、隣の家も高齢者が住んでいるからこんな時間には音は出さない。でも、次第に

ポロンポロン

とピアノ音が大きくなってこちらに近づいてくるように感じた。うるさいなと思いイライラしてゆっくり目を開けると、白い服を着た真っ白い顔の女の子が天井をはいつくばっていた。

時折不自然な角度で首を曲げて私の顔を見て微笑んでいる。なぜ夜中に女の子があんな所にいるのか?このピアノはどこから聞こえてくるの?混乱と恐怖で自分の息が荒くなっていたのを感じていた。
知らないうちに寝落ちてしまっていたのか、気がつくと朝7時の目覚ましが部屋に鳴り響いていた。

両親に昨夜私が何か叫んだり変なことをしていなかったか尋ねたが、両親からは知らないとしか言われなかった。

恐怖の体験をした日から12年経ち、建物の老朽化と不思議な体験を私以外の人もこの家で経験したことや、家族の不幸が重なったのをきっかけに、この団地を引っ越す事となった。
建物はそのまま取り壊される事となり、不要なものの処分は行政がするとのことだったのだが、時間があれば私は片づけを手伝いに行った。
ある時、縁側の奥におもちゃのピアノが置かれていたのを見つけた。私のものでもなければ、今流行りのデザインでもない古ぼけたピアノ。

あの夜聞いた音はこれだったのかもしれないと思い、持ち主だったかもしれないあの女の子を今でも思い出すが、やはり気味の悪い経験だった。