百四十四夜目『部屋に留まった記憶』
これはNさんが東京都M市で体験した話です。
引っ越してきて1週間ほどたった何の変哲もない夜に、眠りについていると今までに見たことのない夢を見た。
ただ内容を鮮明に今でも覚えているということはとても印象深い出来事だったからだと思っている。
これは夢の中の話になるが、知らない家族の方たちのお葬式に自分は参加しているようだった。
その時私は、なぜかそのお葬式に供えられている果物を勝手に食べてしまった。
食べた瞬間に目の前がぐるぐると回った感覚にとらわれて動けなくなり目をつむると家のベットの上、つまり夢から覚めた状態だった。
なんか変な夢だったなあと寝ころんだままふと天井を見てみるとそこには、髪の長い白いもやのような女性が天井と平行に浮いているのが見えた。
これはまずいなと思いベットから降りて離れようと思ったのだが、手首が固定されていてその場から動くことができなかった。
ふわりと自分の方へ覆いかぶさるように近づいてくる女性と接触するその時、固定されていた手首が動くようになり、間一髪避けることが出来たように感じた。
起きておもむろに手首を動かしてみると、両方ともピリピリとしびれていて誰かに押さえつけられていたようなそんな感覚がそのまま残っていた。
入居する際は告知事項などなかったのだが、もしかしたら以前に住んでいた方たちの記憶が偶然入ってきたのかな、などと考えながらもう一度眠りについた。
その後も何度か部屋の電気が急に消えるなどよくわからない現象が起きたりしていたのだが、現在は引っ越しておりその後あの部屋はどうなっているのかは分からない。