【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百四十三夜目『気さくなおじいちゃん』

これはAさんが岡山県I市で体験した話です。

私はよく田舎に猛禽類の観察に出かける。
ここはどうだろうと思うような名もない場所に、昨年から何回も通い続けている。
その場所は目の前には岩肌、標高差300mぐらいありそうな断崖絶壁で、見ているだけでゾクゾクするような景色が広がっている。

初めて行った時に、手入れのされていない空き地があったのでその隅で観察することにした。
空地の前は少量の野菜を作っている畑と田んぼ、それ以外周りには何もない。一日に数回車が通る程度の集落の片隅だった。
私が観察していたある日、おじいちゃんとおばあちゃんご夫婦がその畑で作業をしており、話しかけてくれた。
「何をしてるんかいな」

「タカの観察です」
と言うと、こんな所に居るかね?と2人は顔を見合わせた。
それから何度か話していると、ここの集落には昔22軒ほどの世帯があったそうだが、今は2軒のみしか残っておらず、過疎化がかなり進んでいるという話を聞かされた。

また別の日、そこに何度か通っていると別のおじいちゃんが軽トラから降りてきて、話かけてくれた。
一度か二度ほど話をして、話をしない日は観察している私に向かって、軽トラから手を上げてくれる。
このおじいちゃんは右目が白く濁っていて、恐らく失明しているように見えるが、元気のいいおじいちゃんだった。

その後も何度か通っていたのだが、その右目が不自由なおじいちゃんに最近会っていない事に気付いた。
不思議に思い、畑仕事をしているおばあちゃんに
「右目が悪いおじいちゃんが居られますよね。そのおじいちゃんも話しかけてくれていたのですが、去年秋以降見ないのですが?どうされましたかね」
と尋ねたところ、
「あの人は、だいぶ前に亡くなってね。もう3年から4年前になるよ。もっと前かな・・・。」
と言われ絶句してしまった。私は昨年夏に会って話しをして、それ以降も軽トラから手を上げてくれていた。
それがもう既に亡くなっていた方だなんて、全く思わなかった。

集落に縁のない私が何回も通っているから出てきてくれたのか、人の居ない集落なので、人恋しくなり出て来てくれたのか分からないが、その事を聞いても嫌な感じは全くしなかった。
今も通っているが、タカを見に行くだけではなく、またそのおじいちゃんに会いたいと、心のどこかで待っている気がする。