七十二夜目『祟り』
これはNさんが山形県N市で体験した話です
私が小学生のときの事。
近所の一軒家が火事になった。地方紙の社会面にも載った家事で、出火の原因は分からない。
同じ町内に住んでいたが、全く知らない家だった。はっきり覚えていないが、それから数日経った頃。
その火事があった家の立ち入り禁止が解除され、入れるようになったと小学生の一部で話題になった。
さらによく分からないけれど、普通ではない火事だという噂も出回った。
そこで、学校帰りに友人と興味本位でその家に行ってみることにした。
玄関やふすまなどは焼け落ちていたのだが、屋根の一部や柱、壁などはかろうじて残っていた。
私と友人は、おそるおそる靴のままその家に足を踏み入れた。
噂では玄関のから進んですぐの部屋に何か異変が起きているようだった。
私たちもその部屋の様子を伺うと、一角の壁だけが燃え落ちずに残っていた。
その壁を見上げると、そこには真っ黒いすすが一面についていたのだが、何かの形になっているように見えた
「キツネじゃない…?」
友達に言われてよく見ても、キツネには見えなかった。
「どこにいるの?これ?」
「違う!これ全部が大きい顔!」
あまりに大きくて気付かなかったのだが、その壁一面に目のつり上がった恐ろしい形相のキツネがいた。
燃え上がった炎が、たまたまその形に焼きついただけの物がとても怖く見え、私たちは足早にその場を後にした。
その後親に聞いたのだが、その家が建っていたのはお稲荷様のいた神社の跡地だったようだ。
お稲荷様がお怒りになったのだろうか。
40年も前のことだが、あの光景はずっと目に焼きついている。