これはAさんから伺った話です。
今から約10年前、夫がまだ大学生の頃に起きた愛知県T市での体験。
深夜のバイト終わりに、バイト仲間のAくんと心霊スポットに行こうという話になり、どこへ行こうか話していたそうだ。
「どうせならあいつも誘おうぜ」
と共通の友達のBくんも誘い、3人である有名なトンネルに行った。
そのトンネルはすでに使われていない旧Iトンネルというトンネル。3人は初めに歩いてトンネルの中を探検してみようとしたそうだが、実際にトンネルの前に着いてみるとあまりの雰囲気に足がすくんでしまったそうだ。
そこでAくんがそのトンネルにまつわる噂を思い出し、実践してみようという事になった。
それはトンネルの真ん中まで車で進み、エンジンやライトをすべて消した状態でクラクションを3回鳴らすと何かが現れるというもの。
夫の車に3人は乗り込み、トンネルの真ん中と思うあたりで車を止めてエンジン、ライトを消すと周りが全く見えないほどの暗闇でシーンと静まり返ってとても不気味だったそうだ。早速クラクションを鳴らしてみると
「ぱー…ぱー…ぱー……」
クラクションの乾いた音だけがジメッとしたトンネル内に響き、しばらく待っていたが特に何も起こらなかったそうだ。
その後トンネルの出口まで行くと一軒の民家があり、噂ではその民家から包丁を持ったおばあさんが出てきて追いかけてくるという話もあったということで、3人は車を降りて民家を覗いてみた。
民家の中は暗く、特に誰かが住んでいる様子もなかった。
「何もなかったかー…」
と残念に思いながら、今日は遅いし帰宅しようと夫の車でAくんとBくんを送り、夫自身も帰宅した。
翌日、当時車で通学していた夫はその日も大学に行くため自宅の駐車場へ向かった。
車に乗り込もうと鍵を開けドアノブに手をかけた時あることに気が付いたそうだ。
「なんでこんなところに手形が…」
車の天井部分も含め色々なところに様々な大きさの手形がついていた。初めはAくんとBくんのいたずらだと思い2人に電話して聞いたところ、
「そんな事はしていない」
と2人共否定していた。
とりあえず消そうと拭いてみたものの、全く取れる気配がなかった。夫は怖くなったもののどうすることもできず、とりあえず大学へ向かうことに。
大学に到着し友達に相談しようと車を降りたところ、なぜかあんなに無数についていた手形が一つ残らず消えていたそうだ。