これはAさんが山口県S市で体験した話です。
昔、まだ車の免許を取得したばかりの頃、女ばかりの4人で少し遠出のドライブに出かけた。
帰る頃にはもう真っ暗で、それから1人ずつ送り届けていたのでどんどん夜遅い時間になっていた。
Aさんは友人の運転する車に乗り、道順的に3番目に降りる事になっていたそうだ。
それは1人目を降ろし、2人目の家に向かっていた時の事。
その子の家はそんなに山奥という訳ではないのだが、両側が田んぼに囲まれた一本道がかなり長く続いており、街灯はおろか人家も無いような真っ暗な道の先だった。
その時、遠くの方でチカチカと点滅するような光が見えた。
「あれ、何だろうね~」
などと3人で言いながらそのまま車を走らせていると、近付くにつれてボ~っと濁ったような光が浮いているのが分かった。
「あれ、あそこってこの前事故があったとこだ・・・」
友人の言った言葉に、Aさんはサーッと血の気が引いていくような感じに襲われた。
運転していた友人も一旦は車を止めたものの、回りは田んぼしかなくて回り道の無い状況に、仕方なくスピードをあげて一気に通り抜けようとした。
Aさんはあまり見ないようにしたかったのだが、やはり興味の方が勝ち、通り抜ける瞬間に光を凝視してしまったそうだ。
その光は人の形をしており、人であれば顔であるべき位置だけ穴が空いたように真っ黒で不気味なものだった。
それは車道側を向いたまま、歩道に立っているように見え、その後ろにはたくさんの花が供えられていたのが分かった。
(やっぱり事故で亡くなった人だったんだ)
と、わずかに浮いて見える光を見てAさんはそう思ったそうだ。
帰り道ではその光は既になく、Aさんと運転手の友人だけになった車内はそれでもなお恐怖で静まり返っていた。友人は1人になりたくないと駄々をこね、結局Aさんを連れてそのまま友人宅で一晩過ごしたそうだ。
現在は田んぼもなくなり、たくさんの家が建ち並んでいるが、その道だけは存在している。