これはOさんが広島県K市で体験した話です。
看護師を目指して看護学校にいた頃の事、Oさんは病院に併設した看護学校の寮に入所していた。
その寮ではよく幽霊が目撃されていて、霊感の強いOさんも例外ではなかった。学校から寮に戻る途中に子供の泣き声を聞いたり、老婆がうずくまっていたかと思うと急に走りだし壁に消えていったりと。
その程度なら日常茶飯事だったので、あまり相手にしなかったそうだ。しかしその中でもある体験は今でも忘れられない程恐ろしい体験をした。
ある日、いつものように実習を終えて夜遅くに寮に帰ろうと歩いていると、ふと変な視線を感じたそうだ。
見られている方角に目を向けて見ると、病院の屋根の上に黒い人影が見えた。
その影は妙な動きをしており、踊っているようにも這いつくばっているようにも見えて、どろどろに溶けた人型の何かがのたうち回ってるような、何とも気味が悪いものだった。
少しの間見つめ続けていたが、嫌な予感がして寮に走って帰ったそうだ。
次の日実習に行ってみるとOさんが仲良くしていたお婆さんが前日の夜に亡くなっていた。
それはOさんが変な黒い影を目撃した時間だったことから震えが止まらなかったそうだ。
しかも、担当の看護師さんから聞いた話ではそのお婆さんは、退院目前で容態が急変するような状況では全くなかったとのこと。
あの黒い影と何か関係があるかは分からないけど、あれが死神だとしたらとても気持ちの悪いものでしたとOさんは話した。