これはMさんが秋田県で体験した話です。
夜、バイトが終わり自転車で家に帰っている途中、田んぼ道を通っていると横から車が来てしまい避けきれず接触事故にあってしまった。
普段夜はほとんど人が通らないような場所なのだが、通りかかった人が声をかけてくれて、車の運転手の方も降りて警察に連絡して事なきを得た。
そのときは、たまたま人が通りかかってくれたことも、たまたま車のスピードがそこまで速くなかったので比較的軽傷で済んだことも、不幸中の幸いだったなと思っただけだった。
翌日Mさんはバイト先のロッカーの鍵がなくなっていることに気付いた。
「もしかして、あの時落としたかな…」
すぐに昨日の事故で転んだ時に落としたのだと思ったので、昨日事故にあった場所に探しに行った。しかしどれだけ探しても鍵は見つからない。
もしかしたら田んぼの中にでも落ちてしまったのかと諦めかけたそのとき、後ろの方で
「チャリン」
と音がした。思わず振り向いてみるとそこには、さっきからいくら探しても見つからなかった鍵が落ちていた。
その時Mさんは、あんなにあちこち探していたのに見つからなかったものが突然そこに落とされたように感じたそうだ。
Mさんはそこで、あることに思い至った。
事故にあったとき、数週間前に亡くなった父のパーカーを着ていた事。
勝手な想像なのかもしれないが、大きな事故にならなかった事も、鍵が見つかったのも父のおかげなのではないか。
Mさんは亡き父を思い、今でも見守ってくれてる事に感謝した。
そのパーカーは今でも大切に保管してあるそうだ。