三十九夜目『修学旅行の夜』
これは北海道在住のMさんが秋田県で体験した話です。
Mさんの中学校の修学旅行は毎年秋田県に行く。秋田県と青森県にまたがる大きな湖が見える旅館に宿泊するのが恒例になっており、先輩から幽霊がでるという部屋番号を修学旅行前に聞いていた。
「旅館に着いたらみんなで行こう」
と友達と話していたそうだ。結局Mさんたちはその部屋に行ったのは、夕食後のこと。その年は引率のカメラマンの方の部屋に割り当てられていて、Mさんたちが行った時は鍵は開いていたのだが、留守にしていたようで中には誰もいなかった。先輩からは、お坊さんと女性が亡くなった部屋だと話を聞いており、
「試しに1枚写真を撮ってみる?」
と、部屋の中でシャッターを切った。
その瞬間、部屋にあった絵がいきなり落ちて、それに驚いたMさんたちは怖くなり急いで自分たちの部屋に戻った。
それから消灯の時間になり、部屋の明かりを消して眠ろとした時、
りん、りん、りん
どこからともなく鈴の音が聞こえた。隣の部屋から部屋の前を通り、反対の部屋へ入る。そしてまた部屋の前を通り…これを延々と繰り返している。
ことん
部屋の中で何かが落ちる物音がした。急いで部屋の電気を点けたが、部屋に何かが落ちている様子はなく、例の部屋に行ったMさんともう一人の友達以外、どんなに起こしても起きてくれないという、異様な状況になっていた。
りん、りん、りん、りん
鈴の音は鳴り止まず、Mさんは怖くて布団を被って朝になるのを待っている間に、いつの間にか眠ってしまったそうだ。
朝を迎えて、昨日の鈴の音はきっと先生が持っていた物か何かだと友達と納得しあって廊下に出た時、Mさんたちの部屋が突き当たりの独立した部屋だという事を思い出した。生きた人間には物理的に部屋の周りを回る事は出来ない事と、例の部屋で撮った写真にはお坊さんらしき男の人が、座ってこちらを見ていたのが写っていた。
このお坊さんと鈴の音の関係性は定かではないが、とても怖い思いをしたそうだ。