三夜目『廃駅のホーム』
これはEさんが体験した話です
10代後半のころ、心霊スポットにいくことが流行っていた。
そこで車の免許を取ったばかりの学生4人のEさんたちは、今は使われていない電車のホームに行くことにした。
「車擦ったら最悪だな」
男性が3人、女性はEさん1人で真夏の夜の23時ごろ、グネグネとした山道を車で走っていた。
着いたところは外灯はもちろんなく、人影などあるはずもない。
恐怖心はあるものの好奇心には勝てず、車を停めて実際にホームの中に入ってみる事になった。
「ここからなら入れそうだ」
錆び付いている線路の上を歩いて、ホームの中に忍び込んだが、当然今は使われていないのでめぼしい物は何もなかった。
カサカサ…パタッ
静まり返ったホームで風もないのに音がした。
「なんか、変な音したよね」
音のした方に視線を向けるとホームの片隅にあるベンチ付近から物音がしたようだった。
ビクビクしながらも4人はひとかたまりになって、何か居るのかもしれないと思い、ゆっくりベンチに近づいたがベンチには子供用のものだと思われる小さな靴と、コンビニで買ったであろうゴミが置かれているだけ。
「この袋から音が鳴っただけか、びっくりして損した」
「風もなかったのにか?」
考えても答えは出ず、Eさん達はホームから出て駐車した車まで戻ることにした。
「誰のイタズラだよ、これ」
駐車した車に乗り込もうとしたEさんたちの背中に冷や汗が流れた。乗ってきた車のフロントガラスや車体に小さな足跡や手形がベタベタとつけられていて、4人は怖くなり急いで逃げ帰った。
Eさんはホームにいた子供が裸足で私たちの車に足跡や手形を付けて帰ったのかもしれないと、思い出して話してくれた。
いまだ原因は不明のままだそうだ。