一夜目『4人家族』
これはAさんが高校卒業直後に、沖縄県中部G市の某所で体験した話です。
「免許取ったし、どこかいかない?」
高校卒業してまもなくAさんの友人が車の免許を取ったので、どこかドライブに行こうと連絡があった。
Aさんは仲の良かった男女4人を集めて、目的地も決めずにドライブに行く事にした。
ご飯を食べたり買い物に行ったり、その時まではみんなで楽しく過ごしていた。
「このまま心霊スポットにでもいくか!」
友人の1人が提案し、他にやることも無かったのでみんなが賛成して、G市にある有名な心霊スポットに行くことになった。
そこは心霊スポットというよりは神聖な場所で、沖縄でユタと呼ばれる霊能力者の方々が修行していると言われている場所。幽霊や霊能力を本気で信じてる者は4人の中には誰もおらず、みんな冷やかし半分だった。
「さすがに夜は不気味だな」
車を走らせ目的地に到着した時、辺り一面真っ暗闇の森で、月明かりのみが不気味に明るかった。
Aさんたちは「怖い怖い」と言いながらも森の中へ入っていった。足元もまともに見えない暗闇をスマホのライトを頼りに奥へと進んだ。
最深部へ行くと階段と祠があり、またその横には洞窟らしきものがあった。
「別にお化けも怖い事も何もないじゃん」
友人がそんな事を言ったのをきっかけに撤収の雰囲気になった事を、Aさんはこれ以上奥に進むのは嫌だと感じていたので、内心ホッとしていた。
「記念に写真撮ろうよ!」
何も無かったけど有名な心霊スポットに来たという証拠に、祠をバックにみんなで集合写真を撮って車に戻った。
帰路の途中で写真を見返してみると女友達Bさんの右斜め上にガイコツのようなものがはっきりと写っていた。
「…うわ、なんだよこれ気持ち悪い」
「明らかに写ってるよな」
「きっと埃か何かだよ」
埃とか照明のせいでそう見えるだけだろうと皆で納得しあって、気のせいだと思い込ませてそれぞれの家に帰った。
Aさんが家に着き自室に入った瞬間
「パンッ」
と小さな音が部屋に鳴り響いて、なんの音だと辺りを見回すとカーペットの上に、腕に付けていた数珠が壊れて散っていた。
「数珠のゴムがたまたま切れただけだ、そうに違いない」
数珠の寿命だったんだろうと思い込ませ、怖がっている自分を宥めてなんとか眠りについた。
翌日、Bさんからグループトークに
『昨日、帰ってきてから家の様子がおかしいんだけど』
とLINEが入っていた。彼女は高校卒業後、唯一1人暮らしをしている。
その日Bさんが家に帰ると、ビシッ、バチンと家の中からラップ音が聞こえ始めた。写真の件もあり怖くなったBさんは、玄関や部屋中の窓を施錠して、音楽を聞いて気分を紛らわせようとした。
「チリンチリン…」
部屋のカーテンレールに付けた風鈴が、急に鳴り出して振り返ると、何故か窓が開いていてさすがにマズいと思い、友達の家に駆け込んだそうだ。
Bさんはしばらく友達の家を渡り歩き、1人で家に帰るのは怖かったので、一緒に泊まってくれる友達を連れて家に帰った。
「やっぱり、何か音がするね」
友達もこの家に何か異変が起きているのを感じたらしい。交代でお風呂に入る時、友達に先に入ってもらう事にしてBさんは部屋で待っていた。
「さっき誰かと電話してた?」
お風呂から出てきた友達は、Bさんに尋ねてきたがもちろん電話なんてしていない。友達がお風呂を使っている時、部屋から誰かの話す声が聞こえていたそうだ。
次の日、友達の紹介するユタの方に会いに行くと、
「あなたの部屋に4人の家族が居座っている」
と霊視され、そのまま除霊をしてもらったようだが、Bさんの部屋の異変は収まらず、結局は引っ越す事にした。
新居では何も起こっていないそうだ。