【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

百夜目『一緒に』

これは佐賀県に住むSさんから聞いた話です。

私の元同僚・Aさん(現在60歳)が、若い頃に体験された不思議な出来事。
正確に言うと、体験したのはその方の旦那様で、Aさんはその様子を目撃したそうだ。
ある日、Aさんの旦那様は、バイク仲間3人でツーリングに出掛けていた。
日も暮れ始めたので、帰路についた3人は、S峠に差し掛かった。
よく走っている峠のカーブではあったのだが、先頭を走る仲間の一人が、ハンドリングを誤ったのか、カーブを曲がり切れずに激しく転倒。
その勢いで路肩に投げ出された体がガードレールに激突。
すぐに2人で救助に向かったが、携帯電話も無い時代。

峠の下まで一人が助けを求めに行くべきか。それとも少しでもここで延命措置をした方がいいか。判断を迷っているところに、たまたま通り掛かった乗用車。状況を見て察してくれたその人は、ケガをした仲間を慎重に後部座席に乗せ、一番近くの病院に搬送してくれたそうだ。

事故にあった仲間のバイクは、路肩の少し広い所へ停めさせてもらい、後で2人で車で取りに来ることにした。
搬送先の病院へ向かい、医師に事情を話して公衆電話からケガをした仲間の家族に連絡をして、帰宅。
病院に行った仲間の家族からの連絡を待つために、Aさん宅の二階の自室で2人は待機することにした。
Aさんは、その時の2人の様子が本当に憔悴しきっていたので、よほどひどい事故を目の当たりにしたんだろうと思ったそうだ。

2人が昼から何も食べていないと言っていたので、Aさんは食事を作って持っていき部屋の扉を開けると、夜なのに電気も付けず、部屋は真っ暗。
廊下の灯りで中が照らされると、旦那様と友人がテーブルを挟み、向かい合って座ったまま、俯いて固く目を閉じているのが見えた。

「あんたたち、何やってんの?!電気くらいつけなさいよ!」

驚いたAさんはテーブルに食事を置くと、電気のスイッチに手を伸ばそうとした。すると、

「つけるな!!電気つけるな!やめろ!!」

と、旦那様の叫ぶ声。

「ちょっと、どうしたの??もしかして二人して私の事からかってる??」

普段からいたずら好きな旦那様なので、今回も何か芝居を打ってるのかと思い、そう言うと、

「聞こえる。聞こえるんだ。呼びに来た。窓、窓の外…」

と、友人が、小さな声で囁きながら、窓を指さした。
ますます意味がわからないAさんだったが、窓に目をやると全開になった窓から風が吹き込みカーテンが揺れていた。

季節は晩秋。日が落ちると少し寒いくらいの時期。

「なんで窓なんて開けてるの?どしちゃったのよ!」

Aさんの問いかけに、2人は俯いたまま、窓が勝手に開いたんだと説明した。

「あいつが、あいつが呼びに来てる。一緒にバイクを取りに戻ってくれって、言ってる…」

あまりに真に迫った2人の様子に、これはまんざら嘘や気のせいでも無いのかも知れないと思ったAさん。
しかも、旦那様だけなでなく、友人も同じ声が聞こえているようだった。
ちなみにAさんには、何も聞こえなかったそうだが、部屋の中が凍えるくらいに寒かった事に、後から気付いたそうだ。

「返事するなよ。絶対に呼びかけに応えるな。頼む、俺達には何もできないんだ。ごめん、ごめんな!!許してくれ!」

旦那様が絞り出すように呟くと、その瞬間、家の電話が鳴った。
Aさん、そして旦那様、友人の3人は、その電話が何処からかかって来て、何の報せか、聞かずとも分かったのだった。