これはAさんが香川県T市で体験した話です。
Aさんは、ある年のお盆にいとこの家へ遊びに行ったそうだ。夏休みということもあり、その日はAくんの家族、いとこ家族、さらにいとこの姉夫婦の三世帯が集まり、賑やかに過ごした。
大人たちはリビングで食事をしながら談笑をしているなか、いとこの姉夫婦が連れてきた4歳の男の子Bくんだけ、すぐそばの廊下で一人遊びをしていたそうだ。
その家の廊下は玄関から奥の和室までまっすぐ伸びていて、距離も10メートル近くあった。
Bくんは持ってきたミニカーを走らせたり、人形劇をしたりと、お利口に遊んでいる声がリビングにもよく聞こえていた。
しかし突然、前触れなく、
「いやーーっ!」
とBくんが泣き叫ぶ声が聞こえたかと思うと、大泣きしながらリビングへ飛び込んで来たのだ。
お母さんにしがみついて、
「おばちゃんが、おばちゃんが」
と要領を得ないことを喚いているBくん。
Aくんたちと大人は驚いて、なんとか宥めながら、
「どうしたの?」「何があったの?」
とBくんに尋ねると、Bくんは泣きながらこう答えたそうだ。
「知らないおばちゃんが、ニーーーッて笑って、廊下をケンケンしながら僕を追いかけてきた!」
Aくんたちは慌てて廊下に出たが、そこには誰もいなかったそうだ。