これはIさんが千葉県H市で体験した話です。
昔から有名な心霊スポットへ行った時のこと。そこは東京湾観音という施設に続くトンネルなのだが、工事の最中に事故があり、多くの作業員が亡くなったそうだ。
そのトンネル内でクラクションを鳴らすと車のガラスに無数の手形がつくというのは有名な話。
深夜、興味本位で友人3人で向かい、噂の通りにクラクションを鳴らしてみることにした。
1回・2回・3回…
「………」
運転席の私と後部座席の友人2人、息をひそめ周囲を見回しながら時が経つのを待った。5分くらい経った頃、後ろの2人が互いに
「何もなくね?」
と言いながら笑い出した。その笑い声に私も緊張が吹き飛び、つられて笑ってしまった。まぁもともと霊感など一切ない3人だったので、何かが居ても見えてないだけ、感じていないだけかも知れないと思い、そのまま観音像の方へ向かい、一回りして帰ること。
そして先ほど通ったトンネルに再び差し掛かり、中に入った瞬間のこと。
ポーンポーンポーンポーン
突然聞きなれない電子音が車内で鳴り始めた。
「え?なんの音?」
音の正体は助手席のシートベルトの警告音のようだった。
ただ、もちろん助手席は無人のまま。
「なんで?なんで鳴ってんの?」
後部座席の友人たちも表情をこわばらせ焦り出した。
ポーンポーンポーンポーンポーンポーン
「やばい、やばい!」
シートベルトの警告灯もずっとついたまま、警告音は不気味に鳴り続ける。私は恐怖でアクセルを踏み込み、一気にトンネルを走り抜けると警告音はピタっと止み、何事もなかったかのように静かになった。
それでも私たちは何者かにごめんなさいごめんなさいと謝りながら逃げ帰った。