これはSさん東京都C区で体験した話です。
Sさんが地元の大阪から東京の大学に進学するため実家を出て、東京に引っ越しをすることになった時の事。東京の家を探しているとSさんの高校の同級生で友達のM君が
「俺の叔母さんがこの間まで住んでいた部屋が空いてんけどそこはどう?」
と勧めてくれた。場所を調べてみると大学からも近く、家具もそのまま残しているというのでそこに住むことにしたそうだ。大学の授業も始まり東京の生活にも馴れた頃、久しぶりに友人のM君と電話で話をしたとき、M君が
「そういえば、この間俺の叔母さんが病気で亡くなってん。お前が今住んでいる部屋を空けたのも病気が進行して東京から大阪の実家に帰って療養するためやったんやけど…」
と言い出した。M君の叔母さんはいつもお気に入りのフランス人形を抱いていて亡くなる日も大事そうに抱えていそうだ。その人形にはビー玉のような綺麗な球が目の部分にはめこまれているのだが、なぜか右目は球が取れてしまい空洞になっていてそれが気持ち悪いとM君はずっと思っていたと話した。
長電話で夜も遅くなり明日の大学の授業が朝早かったので、M君との電話を終えてSさんはベッドに横たわり眠る事にした。数分経過しウトウトと眠りにつこうとしたその時、何かが自分のお腹の上に乗っている事に気が付いた。
寝ぼけていた頭が一気に覚醒し、ゆっくり薄目を開けて、自分のお腹の方を確認すると右目のないフランス人形がSさんのお腹の上に乗っており、
「ワタシノ・・・・メ・・・・カエシテ・・・」
とSさんに向かってつぶやきました。Sさんはあまりの怖さにそのまま意識を失い気が付いた時には朝になっていたそうだ。
慌ててお腹の方を見るとフランス人形はいなくなってしまいた。Sさんは
「M君が叔母さんの人形の話をしたからきっとあんな夢を見たんだ」
と自分に言い聞かせ、支度をして大学へ向かった。次の日大学が休みだったこともあり部屋の掃除をすることにした。
Sさんはこの部屋に来てまだ一度もベッドの下を掃除していなかったので、そこを掃除しようと思い、ベッドを動かすとそこにはビー玉のような綺麗な球が一つ落ちていた。
M君からの聞かされた電話の内容と、夢での出来事、そして今見つかった物。全てがあまりにも出来すぎた話のようで気味が悪かったSさんは、今までのことをM君に話して、その球を返すため叔母さんの墓前に参拝したそうだ。