これはKさんが愛知県N市で体験した話です。
中学校に入学してすぐ、部活の体験入部期間というのが1週間あった。
私は友人と一緒に色々な部活を見て回ったのだが、1週間の最後の日は茶道部に見学に行くことを予め決めていた。
なぜかと言うと、体験入部期間の最終日は茶道部が毎年お茶会をするので、お茶とお菓子が目当てだった。
私の中学校には体育館のそばに和室があり、ドアの真ん中がガラスになっているのでそこから中の様子が見れるようになっていた。
その体験入部の最終日に、体育の授業で体育館に行く時、それとなく和室を覗いてみると奥の襖が開いており、正面に日本人形が置いてあるのが見えた。
一瞬人が座ってるのかとびっくりしたけど、その時は和室だから日本人形が置いてあっても普通なので特に疑問にも思わずそのまま授業に向かった。
放課後になり、茶道部の体験入部に参加した時に、お茶とお菓子を食べながら茶道部の人と話をしていたのだが、昼間見た日本人形がどこにもないことに気づいて、茶道部の人に尋ねた。
「昼間そこに置いてあった日本人形はどこか持っていったんですか?」
「え?日本人形なんて最初から置いてないよ」
昼間一緒に覗いていた友人達にも日本人形なんて見ていないと言われ、それ以降はお茶の味もお菓子の味も分からないほど怖くなってしまった。
それから特に不吉な事が起こったとかそういうことはなかったのだ、気味が悪く茶道部には入らず、卒業まで和室には一度も行けなかった。あの日本人形は何だったのか今でも分からない。