百八十三夜目『追ってくる』
これはSさんが北海道S市で体験した話です。
私が高校生の時の事。
いつものバンド練習を終え、帰路につく途中。
その日はバンド練習の後にメンバーと夕飯を食べたので夜遅い時間で真夜中の帰宅になった。
自転車に乗りいつもの道を通り、家に戻っていた。
どこからなのか?いつからなのか?人なんていた?
ふと気づくと国道の一本道を走る私を追うように、ものすごい勢いで人が走ってくるのがカーブミラーに写ったのが見えた。
私は自転車。どう考えても人に追いつかれるはずはない。それなのにカーブミラーを見る度に私にどんどん近づいてくるように距離が縮まっていた。
私は恐怖を感じながら、ペダルを全開で漕ぎ続けた。
でも、相手は私にどんどん近づいてくる。汗をかきながら恐ろしさに震えながらひたすらペダルを漕いだ。
「にげろ、にげろ、にげろ」
なぜなのか、頭の中でそんな声が聞こえた気がした。嫌な予感がして後ろを振り返ると、もう手が届きそうな距離に相手がいた。
私は恐怖のあまりハンドル操作を誤り、側溝へ突っ込んでしまい転倒してしまった。
これは捕まるか。そう身構えた瞬間相手はそのまま直進。その直後に前方の交差点で物凄い音がして車同士の交通事故が起こっているのが見えた。
もし私がそのまま直進をしていたら、転倒せずに進んでいたなら。そう考えるとゾッとした。
「次は逃がさない」