百七十二夜目『寮を徘徊する女』
これはCさんが沖縄県I市で体験した話です。
私が高校の時に住んでいた寮は入学当時から幽霊がでると噂になっていた。
開かずの部屋が1つあり、夜中絶対その部屋の前には通らない方がいいと先輩から教えてもらったた。
実際に誰かがその寮で何かを見たというはっきりした話は聞いたことがなかったのだが、学校や、寮に関する開かずの部屋というのはどこにでもあるような噂だと思っていたので、あまり気にしていなかった。
入学して1か月が経ったある日の夜中、隣の部屋の子から、自分の部屋のベランダに誰かが立っている、怖くて動けないので部屋に来てほしいと連絡があった。
不審者?と思い私は急いで自分の部屋から出ようとするとなぜかドアが開かず、ものすごい力を入れてやっと開ける事ができ、隣の友人の部屋に行くと、友人は怖かったと泣いた。
今日は一緒に寝る事にして、私は自分の部屋の電気を消し忘れた事を思い出し自分の部屋に戻ろうと友人の部屋を出ると、廊下の先にある開かずの部屋に向かって立っている女が見えた。
瞬間的に、これは幽霊だ。と思い自分の部屋へ戻らず再度友人の部屋へ引き返した。
「今さ、開かずの部屋の前に黒い服を着て髪の毛が肩ぐらいの長さの女の人が立っていた」
と友人に話すと
「それさ、多分さっきベランダにいた人…」
と泣きながら答えた。
どうやらその幽霊は夜な夜な寮を徘徊しているようで、開かずの部屋が関係しているのかどうかは分からないが、いつ、寮のどこで出くわすか分からないという話を聞いた。
先生にも相談したが、霊的なものは仕方がないので気にしないようにと言われるだけで、どうすることも出来なかった。
それから卒業までにその女とは何度か遭遇したが、大きな実害がなかったのがせめてもの救いだ。