百七十一夜目『電話口の女性』
これはRさんが東京都N区で体験した話です。
20年程前の事。
当時私は1人暮らしをしていたアパートの最寄り駅近くの小さなスナックでアルバイトをしていた。
その日はお店の定休日だったのだが、前日お店に忘れ物をしてしまいお店に取りに行きたいと考えていた。
夜になれば定休日でもマスターがお店にいる時が多々あったので、夜まで待ってお店の入っているビルの階段の下で電話をした。
「プルルルル」と3回程呼び出し音が鳴り、誰かが出る音がした。
電話の後ろでは賑やかな音楽がかかっていて、私は「マスター、お友達呼んで盛り上がってるんだな」と思い
「マスターお疲れ様です。○○ですけど、昨日お店に忘れ物しちゃったんです。今下にいるので取りに行っていいですか?」
と尋ねた。
「…。○×△…」
電話に出たのは女性の方のようで!か細い声で何を言ってるのかさっぱり分からない。
マスターの知り合いの方かな?と思い、
「あ、すいません‼︎私そこのお店のアルバイトで○○といいますが、マスターに変わっていただけますか」
と言ったのだが、その女性は「○×△…」やはり何を言ってるのかさっぱり分からなかった。
「すいません、アルバイトの○○が今からお店に忘れ物を取りに行くとマスターにお伝えください」
と私が言うと電話が切られた。
なんだかなぁと思いながら階段を登ってお店の前に着くと…電気も付いてない…どころか外から南京錠がかかっている状態。
そのビルにはエレベーターもないし、階段も1つしかない。
私は階段の下から電話をしていて、その間誰もそこは通っていないのだ。
すごく嫌な感じがしたので慌ててアパートに帰った。
次の日、アルバイトだったのでマスターに確認した所「昨日は全くお店に来てない」との事だった。