百六十四夜目『父の霊感』
これはMさんが栃木県U市で体験した話です。
10年ほど前、私がまだ高校生の頃
私の家族は父と母との3人家族で、父は昔から霊感のようなものがあると言っていて、○○には近づくな、とか、××の方には一人で行くなよ、等
たまに訳の分からない助言をされることもあった。
霊感なんてものも全く無く、反抗期真っ盛りだった当時の私は
「何なんだこのめんどくさいオヤジは!!」と常々思っていた。
その日は、私は友達と3人で自分の部屋で遊んでいた。
しかし友達一人の様子が少しおかしく、
「どうしたの?」
と聞くと、最初は何でもないよと言っていたのだが、明らかにいつもと様子が違うので、
「本当にどうしたの?具合でも悪い?」
と聞くと、とても言いづらそうに答えてくれた。
「おかっぱ頭の小さな女の子が、扉のところを行ったり来たりして、こっちを見ている」
「え!?」
と、私ともう一人の友達は驚いて扉の方を見たが、もちろん誰も居ない。
その子に詳しく話を聞くと、気味悪がられることが多いので話していなかったが、昔から霊感があるそうで
「そこにいる女の子は4.5歳位の女の子で、怖い感じはしないから大丈夫だと思う。
知らない人が来てるから気になって仕方ないけど、知らない人がいるからこの部屋に入って来れないんじゃないかな。
だから、女の子の気分を害さないように早めに帰った方がいいのかなって考えていた」
と、言うのだ。
私は、怖くなると同時に「もしかして何か気に障ることしたかな?早く帰りたいのかな?」と、そんなことも考えてしまい、とりあえずその日は早めに2人に帰ってもらった。
もやもやしながら夜になり、父が帰ってきたとき、私は思いついた。
霊感あるとか言ってるオヤジをぎゃふんと言わせてやろうと。
「今日ね、うちに友達呼んでたんだけどさ、その中の一人の子が変なもの見たって言うんだよ。
2階の私の部屋のところに、ちっちゃい男の子がいるって言うんだよ!!お父さん、知ってる?」
「あぁ、お前が怖がると思っていたから、言っていなかったんだが」
父の霊感が本当にあるのかカマをかけたらあっさりと引っかかり、心の中で大笑いしていたのだが、
「でもおかしいな。家に居るのは小さな女の子のはずなんだがな。まぁおかっぱで髪は短めだが…その子は男の子と言ったのか?」
ぞっとした。もちろん友達と父は面識なんてない。
この時から私は幽霊をちょっと信じ始めて、父ともちょっと仲良くなれた気がする。