【実話系怪談】忌奇怪会~kiki-kaikai~【本当にあった怖い話】

Twitter→https://twitter.com/kikikai76211126?s=09 怖い話を集めています。 ある程度見て頂ける人が増えたら、wordpressなどを使って原文も合わせて投稿したり、 コメントなど頂けた人気の高い話は朗読系YouTubeでも公開しようと考えています。 現在はまだまだ細々と、1日1話投稿出来れば良いかな…と。二次使用などはご相談下さい。

九十六夜目『行方不明』

これはWさんが兵庫県A市で体験した話です。

僕自身が15年前に体験した事。
当時新聞配達のアルバイトをしていて、その日も午前2時30分から原付に新聞を積み込んでいた。
すると先輩バイトさんが

「また増えてるなあ」

と言っているのが聞こえた。僕はその言葉でなんの事かすぐに分かった。新聞配達を経験した人なら知っているだろう、新聞屋の壁には地元で行方不明になった方達の写真がずらっと貼られていて見つけたら連絡をしないといけない。
先輩の言葉は僕の想像通り、その行方不明の方の写真が一枚増えていたから出た言葉だ。これ自体は特に珍しい事ではない、というのも行方不明と言っても徘徊老人の方がほとんどで、中には見つかっても数日後にはまた写真が貼られてるみたいな事もあった。
そういう事が何度もあるので僕も何気に
「また増えたのか」みたいな感じでその増えた写真を眺めた。

どこにでもいそうな少し上品な90歳くらいのお婆さんの写真が貼られていた。まあ見つけたら連絡しないといけないのでぱっと頭の中に入れて、いつものように出発した。片田舎の住宅街で街灯もなく原付のライトの明かりだけが頼り。
いつも通り配達をしていて、あるアパートの2階に配達に向かった時の事。このアパートが何気に僕は好きだった。廊下の電気は結構明るくて、怖がりの僕からしたら精神的に休める所だった。

そんな事もあり自然と小さな鼻歌でリズムを刻みながら、アパートの階段を上がって目的の部屋の前に着いたので新聞入れに入れて、

「ふうっ」

と一息ついて来た道を戻ろうと振り返った瞬間、

「っ!」

お婆さんが僕の背後に立っていた。本当にびっくりした時って声も出ないんだと気付いたと同時に、小走りで原付きに向かい深呼吸して落ち着こうとした時にふと思い出した。
今日増えていた写真のお婆さんだった。連絡しなければと思い、携帯で新聞屋の事務所に連絡したのだが、事務のおばさんの反応は僕の想像とは違い

「ほっとき」

の一言。僕は納得できずに少し大きな声で

「何でなんですか」

と聞き返すと、事務のおばさんは本当に冷静な声で

「その人、今事務所の前におるねん」

と言われた。頭の中が?になっている僕に事務のおばさんは

「その人はもうとっくに亡くなってる。見つけてほしいからそんな事してんねん。あーもう視える体質って嫌やわあ」

と言って電話を切られた。電話を終えて静かになり、辺りがまだ薄暗い事が急に怖くなってきた。幸いあと少しの配達だったので急いで終わらせて事務所に帰った。
事務所のおばさんは何事も無かったかの様に

「今日は早いやん」

と言われた。

「何でそんな冷静なんですか」

「シー!まだおるから!」

その一言ですべて理解してしまった僕は急いで帰ると同時に、新聞配達の仕事は辞めた。理由を聞かれたがお婆さんの事は言えず、結局お婆さんの事も怖くて調べなかった。