七十六夜目『落書き』
これはYさんが岐阜県G市で体験した話です。
高校3年生の頃、祖父母の家で居候をしていたときの事。
住んでいたのは祖父母と私の3人。季節は冬だったと記憶している。
私が使わせてもらっていた部屋は、昔叔母が使っていた部屋。
叔母はイラストを描くのが大好きで、当時使っていた勉強机はらくがきだらけだった。
私はその机にかわいいチェック柄の布をかけて使っていた
ある日、私は勉強の合間に「これだけらくがきあるなら増やしてもいいよね」と軽い気持ちで机に黒の油性マジックで女の子の絵を描いた。
途中まで描いた所で、時間も深夜を回ってしまったため、その日は机の上に布をかけて就寝した。
次の日、そのままいつも通り学校に行き帰ってきてからのこと。
絵の続きを描こうと布をめくった瞬間、背筋が凍りついた。
私が描いた女の子の絵が赤いバツ印がつけられている。
祖母は足が悪く階段がのぼれないし、祖父もよっぽどの用事がない限り2階にはあがってこない。
その日に来客はなく、誰も私の部屋には入っていないはず。
入ってきていたとしても、布をめくって描きかけの絵にそんなことをする人はいない。
当時から私は2階の奥の部屋がなんとなく怖い気がして、自分の部屋より奥にいくことがなかった。
その出来事以降、ますます怖くなってしまい卒業とともにお世話になっていた祖父母の家をすぐに出た。