六十三夜目『集合住宅』
これはMさんが京都府Y市で体験した話です。
Mさんが小学生の頃、現在は合併してしまって数も減っているが、昔は小学校がたくさんあり、人口も多く集合住宅がずらっと並んでいた。いわゆる団地というもので、A棟〜E棟まであった。
その中で、MさんはD棟に住んでおり、同じD棟や、C棟やE棟に住んでいる友人たちと集まって、ローラーブレードを着用して走り回ったり、レゴやシルバニアファミリーを持ち寄って遊んでいたそうだ。
いつも友達が集まっているYちゃんの家はC棟にあった。ちょうど真ん中の棟ということ、ご両親が共働きで家にいないこともあり、皆が集まりやすかったのだ。
「Yちゃんは昔から霊感がある」という話を、以前からMさんの母から聞いていた。親同士も仲が良かったので、母もYちゃんのお母さんから話を聞いていた。
Yちゃんはよく、
「黒い男の人が枕元に立ってる」
と言っていたそうだ。しかし、Mさんもまだ幼かったのでその話もよく分かっておらず、Yちゃんと遊んでいる時に違和感も感じていなかった。
ある雨が降っていた日のこと。
雨だからお家で集まろう、とシルバニアを持ち寄ってYちゃんの家に集合した。
Yちゃんはその日、少し元気がなさそうだったが、皆で遊ぶことには賛成し、快くお家に招いてくれた。
不思議なことが起こったのは、なんとなく雨の降り具合を見たくてカーテンを開けた時。
Yちゃんが急に大きな声で、
「開けないで!!!!」
と叫んだ。
皆がびっくりしていると、Yちゃんは泣き出してしまった。
Yちゃんに、どうしたの?とみんなが声をかけると
「外に黒い男の人がいて、さっきからずっとこっちをみてる」
と言うのだ。
本当かどうか確かめたいのだが、あまりにYちゃんが嫌がるので、そのままカーテンを開けられずにいると、今度はBGMとしていてかけていた曲が急に不気味な音を流し始めた。それは数秒の事だったが、すごくゾッとしたのを覚えている。
怖かったのだがYちゃんを1人にすることもできず、Yちゃんのお母さんが帰ってくるまで、みんなで過ごしていたがそれ以降は何も起きなかった。
中学生になるとYちゃんはE棟に引っ越し、新しい家では一切そういったものを見ることがなくなったそうだ。