六十二夜目『バイクの音』
これはNさんが北海道S市で体験した話です。
高校生だったころ、テストを控えていたため自宅のリビングで、徹夜覚悟で真夜中に勉強していたときの出来事。
それは家族も寝静まった深夜2時くらいだった。
Nさんは勉強中、いつの間にか床に横向きに寝転がり寝落ちしてしまった。
ハッと目が覚め、勉強しなくちゃと思い起き上がろうとした時、右耳のそばから大きなバイクの音が聞こえてきて、背後に人の気配を感じたそうだ。
家族は寝室で寝ているはずの時間、何よりNさんと後ろの壁との間は5cmくらいしか隙間はないはず。
そこに誰かがいるのはおかしいと気づき、とにかく起き上がろうと思った瞬間、何故か身体が動かなくなってしまった。
怖い、怖いと思っていると背後に感じていた気配から
「はぁ…はぁ…はぁ…」
と荒い息づかいが聞こえてきた。
(やっぱり、何者かがいる!)
怖くなったNさんは、これは人間じゃない何かだ…と思い、とにかく心の中で必死に
と念仏を唱え続けたそうだ。
すると今度は左耳だけに、大きなバイクの音が聞こえたあと、金縛りも解けたそうだ。
結局何者だったのかはわからないが、家のすぐそばには大きな幹線道路があり、バイク事故も多発していたのが原因かもしれない。