三十三夜目『肝試しの道中』
これはSさんが熊本県で体験した話です。
大学生の時の話になる。知人4人で心霊スポットに向かう予定を立てていた。Sさん自身幽霊や心霊は全く信じないので軽い気持ちで付き合っていたそうだ。
話も煮詰まり大学から一番近い心霊スポットに決まり知人の車で出かける事になった。
洋楽をかけ懐中電灯で対向車を照らしたりと馬鹿げた事をしていた。向かう心霊スポットは海岸で、砂浜から無数の手が出ると言われている場所で、いかにも胡散臭そうな話だった。
目的地まで残り数キロの所でトンネルに入った。するといきなり付いていた懐中電灯が切れた。
「電池が切れじゃないか?」
「いや、出てくる前に新しいのに入れ替えたから有り得ない」
全ての懐中電灯のスイッチを入れてもどれ一つ付かなかった。怖くなったSさん達は一目散にUターンしその場から立ち去ることにした。
トンネルを抜けると懐中電灯のスイッチが付くようになった。故障でない事が証明され、ますます怖くなったSさん達はひとまず知人宅に戻ることにした。
車を走らせ対向車が見えた時はホッとした。
安心した事でおかしな事に気付いた。車で洋楽をかけていたのだが、
「DEATH」「DEATH」「DEATH」
とリピートされていた。慌てて音楽を消し誰も口を開かず無言で帰宅した。
知人宅でグーグルマップを見直すと、トンネルの上は火葬場になっていたそうだ。